《心理的な距離》母子の分離といっても、何も完全に子どもを親と別に住まわせるということではありません。母子が心理的な距離をとり、子どもの精神的な自立をうながすということです。母親の過剰な世話焼きが子どもの自立心をうばっていることがあるからなのです。
《子どもをコントロール》これは、もともとの母親の病理ということもあるのでしょう。アダルト・チルドレンの世界では、母の病理的な部分が子どもをコントロールする癖となってあらわれて、たとえば引きこもりなどの現象になる場合もあると考えられています。ある引きこもりの子どもを持つ親ごさんは、「(子どもへの対応の仕方を変えろといわれても)これしか知らないのだから、変えようがないと困惑しておられました。
《母と子の境界線》心理療法には、母と子のあいだに、境界線を引くというタイプがあって、その代表的なのが、家族療法です。家族療法の対象者は、ごく幼い時分のおむつやミルク、抱っこなど、人生の草創期に必要な世話はもらっているので、精神的に重傷ではないと考えられています。ただお母さんのコントロールパワーが強いのに加えて、もともと不器用な質(たち)なので、社会に出にくかったりするのでしょうね。対人関係がもともと苦手でない方は、(お母さんとの関係について)「ああ苦しかった」と言いつつ、どうにかふつうに暮らしている方もいます。
《ふたたび引きこもりに》また、ある方は、お母さんのほうが心理療法を受けて母子ともに回復し、お子さんは、外に出られるようになったのですが、そこへお父さんが亡くなってしまわれました。すると、知らず知らずのうちに、子どもへ気持ちが傾き、依頼心が強くなってしまわれたのでしょうね。ふたたびお子さんが引きこもりになったということです。