《針金の母と布製の母》アメリカの心理学者ハーローの有名なアカゲザルの実験があります。赤ちゃんザルを、生みの母親から離し、針金でできたミルクの出る母親と、ミルクは出ないが、柔らかい布でできた2体の母親を与えて、どのような行動をとるのか観察しました。
《肌ざわりが重要》赤ちゃんザルは、終始ミルクの出ない布製の母親にしがみつき、ミルクを飲むときだけ針金製の母親のもとへ出かけました。この実験によって、赤ん坊にとって柔らかい肌ざわりがいかに重要かがわかりました。
《各種の障害》ハーローはサルの実験をいろいろと行い、子ザルは柔らかな肌ざわりを与えられていても、成長すると群れになじみにくいなど各種の障害が出ることがわかりました。それから性行動の障害も出たそうです。性への攻撃がなかったにも関わらずです。性というのが、いかにトータルな人間性(サル性?)とかわっているのかがわかります。
《愛情はない》ハーローは、性行動がとれないメスザルをしばりつけて、生殖が行なわれるように、レイプ・ラック(!)というものもこしらえたそうです。ハーローがサルにたいして少々残酷な実験をやり続けたことによって、非実験動物の保護という観点がもたらされました。ハーローは、サルにたいする愛情はないと言っていたそうです。全体の印象としては、ハーロー自身の何らかの心の傷を暗示させる一連の実験と言えるのではないでしょうか。