閉じ込めた怒りの作用によって右往左往することに別れをつげることは重要です。怒りの放出をふくめてできれば感情転移は体験したほうがよいと思われます。感情転移とは何でしょうか。感情転移をひらたく言うと、忘れていた過去の親子関係と同じ熱い思いを再体験することによって、少しずつ葛藤状況における感情のレベルが平穏なものへと近づいていくことです。
寝ても覚めても受診している精神科医やカウンセラーのことで頭がいっぱいだった人が、ある時急に彼らに興味をなくしていくことがあります。どうしてあんなに夢中だったのかと自分でも不思議になります。人によってはそれが速(すみ)やかにやってきます。じつはこれも治癒が近いことを知らせるサインなのです。
カウンセラーのがわから見ると、それまで甘えて依存していたクライアントさんが話し方もきりっとして力がこもっているような感じになってきます。顔も硬直したような感じがなくなり、依然に比べたら大人っぽくなってくるものです。こうなったら巣立ちが近い証拠です。カウンセリングの終結は、わが子の旅立ちと同じです。元気でいてね、時々姿を見せてよね、といった感じでしょうか。