事例紹介

1、≪うつ・夫の性的嗜好(しこう)≫―女性・60代

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全身不調で抗うつ剤を服用。パニック発作が過去に起きたことも。一回めのカウンセリングにおける開口一番の主訴は、意外にも夫の性的嗜好。クライアントさんは、うつの原因は夫ではないのかと感じていました。
「(性的な嗜好を)断ったことはないのですか?」
「ありません。なんかとても、こうやさしくせがむような口調で言うものですから。圧制的な言い方なら断れるのですが。それに私は断るのがもともと苦手なんです」
「断ると離婚など経済的な苦境に追いこまれるという心配もありましたか?」
「それもありました」

コーネル・メディカル・インデックス(CMI健康調査表)を実施してみると、罪悪感などうつに特有の心の傾向は少ないようでした。うつに見られるイライラ感はありました。医療機関での診断名は自律神経失調症で抗うつ剤を処方。ようするに精神な症状が心よりも体に症状の出るタイプで、仮面うつ病的ともいえます。他に頭重、耳鳴り、耳の周りが締めつけられるような感じ。首を絞められるような不愉快な症状も。

クライアントさん自身が感じているストレッサーは、夫とその一族。結婚当初夫から「ボクのほうの家族のことを第一に考えてくれ」「月給の三分の一を母に仕送りしてくれ」と言われ、言うとおりに仕送りをしていたもののうらみに感じていました。そこで夫とその一族に対する思いを安心できる環境で思いきり話してもらいました。

次にカウンセラーが聞きたかったのは、クライアントさん自身の生育環境。「断るのが苦手」な性質は、成人してからや結婚後に醸成されるものではなく、原家族との関係が濃厚に影を落とすものです。聞いてみるとやはり母との関係で、わがままを言う(自己主張をする)ことは許されない、絶えず叱責を受けて育ったことなどがわかりました。

ストレッサーたる夫の行為もうつの原因のひとつだが、拒否して自分自身の身を守るためという選択が思いおよばないような思考法の育った母との関係も問題であったとカウンセラーとクライアントさんの双方で確認。

ちなみに性的な嗜好について、一般的に夫婦の双方で好みが一致すればそれはOKであること。ただし体を傷つけたり、命の危険が伴なわないかぎりにおいてです。片方が苦痛であれば、ノーマルな人がアブノーマルに合わせる必要がないということもお話しました。どこまでがノーマルでどこからがアブノーマルなのかは、世の中に性的な刺激があふれているのでほんとうに難しいことと思います。

初回から臨床動作法(一般的な動作法と多少異なる)をしばしば実施、動作法を行なうと目の回りが赤らみとても気持ちがよいとのこと。臨床動作法は、心の奥深くまで暖められたという感じのする方と、何も感じないという方がいます。臨床動作法は、実行するのに数分間しかかかりません。そして効果があったのかどうかカウンセラーにもすぐに体感から感じ取れます。

カウンセリングが進むにつれて首の締めつけ感や耳の周囲が固まっているようないやな感覚が減少。抗うつ剤の処方が減る。しかし薬が減ると、それまで感じていなかったような違和感が出るもの。
「薬が減ると当初は誰でもへんな感じがするものですよ。これは快方に向かうサインと思ってください」
「そう言われると安心です」
しかし一直線で快方に向かったわけではありませんでした。季節的な影響がけっこうあります。ジグザグではあったがクライアントさんは確実に過去に着ていた衣を脱ぎ捨て始めていました。

家族図(ジェノグラム)を作成してみると、ぞろぞろと出てきました。夫がわに特に顕著に出てきました。しかし、それほど破滅的ではありません。夫がわの義兄に「おまえを会社からクビにさせてやる」と夫をおどすかすようなやや境界性的な人物がいましたが、その人がもっともきわだった人物でした。

クライアントさんは、当初夫の性的な嗜好について、世間的には普通のことかもしれない、断らないで受け入れるべきなのかもしれないと考えていました。その性的な嗜好とともにセックスをしないと男性としての絶頂感が得られないようです。若くて健康な妻なら異なる対処法もあったのかもしれませんが、このクライアントさんはこの性的な嗜好によって自分はうつ状態になっていると自覚していたので、まず夫の趣味にお付き合いをする必要はなく断ってもよいのだという選択肢について話し合いました。結婚生活は長く、断ることによって破綻することはないだろうと予測しました。

断ることができるようにアサーティブトレーニング(主張訓練法)を行ないました。アサーティブトレーニングは、カウンセリングを徹底的に行ない、吐き出しきることによって、より実行しやすくなります。

この訓練でわかったことは、クライアントさんは、自分の感情をあらわすボキャブラリーを持っていなかったことです。またどういうことをしたら、その最中に夫の気持ちをそぐことができるのか二人で笑いながら列挙していきました。そしてじっさいに断る言葉を口にして練習しました。そんなある日、また夫の要求があったそうです。しかたなく応じたそうですが、以前よりもずうっとダメージが少なくなっていることを感じたそうです。

そしてついに、夫にノーといえる日がやってきました。お風呂に入っていると夫がやってきて、「ちょっと見せてもらっていいかい?」とたずねました。クライアントさんは、「いやです」と重々しく言えたそうです。やがて夫の手術で、カウンセリングは休止。クライアントさんとカウンセラーが感じていた以上に客観的には回復して見えていたようです。クライアントさんの友人が元気になった彼女を見て、娘さんの来談を申し込んでこられました。

 

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