- 《逃避行は2度め》昭和13年、当時の有名女優の岡田嘉子が杉本良吉と、ソ連への脱出をはたしたことに世間はあ然としました。じつは、これは嘉子にとって2度めの雲がくれというか逃避行でした。以前にも撮影中にきびしい監督に追いつめられ、後に夫となる俳優の竹内良一と映画制作の現場から逃げ出していたのです。それで第一線の映画スターの座から降りることになりました。
2.《秘密の出産》この思いきりのよすぎる行動のヒントになるできごとが、彼女の秘密の息子の出生にかかわっていることに気がつきました。彼女がうら若い女優として芽が出始めのころ、事件性のあるとつぜんのできごとで子供が生まれたのです。性暴力に近いものだったようです。
3.《性暴力のトラウマ》トラウマのなかでも性暴力の被害はとても重いものです。いろいろな症状がありますが、岡田嘉子の行動と関連する症状と思われるものに、ストレスを感じやすくなっていることがあげられます。それでなくとも映画制作の現場はストレスフルと思われます。ふつうなら、それでもじんわりと耐えるところをトラウマがあると、ささいなストレスでも感じやすくなるので、先のことをあまり考えないで、その打破のために思い切った行動をとることがあります。
4.《ストレスを感じやすい》何もかもすべてを捨てれば、新しい環境で思いきってやり直せると考えるようです。重いPTSDがあったために、何もかも投げ出したいという潜在的な欲求を抱いていたと思われます。ところが生きづらさの原因が心の傷に関連しているので、新しい環境でやり直したいと、一度は心機一転で再スタートをしたものの、気分はそう長くは続かないようです。それでまた、脱出してスパッとやり直したいと考えたのかもしれませんね。
5.《ソ連では粘り強かった》ソ連では重い代償を背負っての生活でしたから、彼女のもともと持っている強い資質で粘り強く生きぬいたのでしょう。