東日本大震災で被災して、まだトラウマから癒えない方に言わないほうがよい言葉があります。あれだけの大きな被害ですから、さまざまな恐怖感情がわいて神経症状的なものが出るのは当然です。ちなみに、急性ストレス障害をASDといい、これは直後から続く通常の恐怖の反応でしだいにおさまっていきます。
PTSDは、ASDのように時がたっても治まることがなく、恐怖感情が過去のものになっていかないことに特徴があります。人は、生きるか死ぬかの恐怖体験を味わった直後から、固まって生き抜くことがあります。PTSDは、全員がなるのではなく、もともとなにか問題を抱えている人がなりやすいと言われています。戦闘参加者は、長いこと究極の恐怖体験にさらされるので、PTSDになりやすいと言われていますが、アメリカの報告では、だいたい4~5人に1人くらいのわりあいで、症状がでるそうです。
大災害に見舞われて、固まってい過ごしていた人が、涙が流れるようになるのはとてもいいことです。涙は、恐怖体験を少しだけ、過去のものにしてくれるからです。だから、たとえば「泣くな、男だ」などの言葉は禁句です。涙はストップさせないこと、そのうえで、いっしょに泣いてあげられるともっとよいかもしれません。ハグして、人のぬくもりを伝え合うのもよいのかもしれません。子供にスキンシップをすると、この世は安心だという基本的な肯定感を伝えることになるでしょう。
震災のつらい思い出を話す人に「思い出しちゃうから、言わないほうがいい」というのも、同じようによくありません。話すことによって、つらい思い出が過去のことになっていくのですから、話したほうがいいのです。PTSDに苦しんでいる人が、話したことによって、脳血流が改善されたという報告があります。おびえている人は、おびえることによってそういう感情を体のそとに発散しているのです。
マイナスの感情は、それをあらわすことによって、体内から対外に放出するので、それによつて少しでも心の健康を取り戻せていることがあります。