《芸術は症状である》フロイトは、芸術は芸術家の症状であると言ったとか。たしかに、トラウマがあるがゆえの繊細な傷つきやすさは、作品に異様な輝きをもたらす場合があるようです。また、テーマはつねにすぐそばに存在するといった状態になるのでしょうね。
《スティーブン・キングは治療を拒否》「スタンド・バイ・ミー」の作者スティーブン・キングもトラウマを負った人でした。しかし、彼は、トラウマの治療を拒絶しました。「誰それ(作家)は、治療したら、作品がつまらなくなった」と言ったそうです。
《葉書でもすごい迫力》私の友人で、生育時の傷のあるAさんは、時々私に葉書をくれていました。その方の書いた文章は、ただ暑いと書いてあるだけでもただならない輝きがありました。なんとなく、葉書を見た家族が「すごいね~」と驚いていました。
《治療後輝きが失せる》彼女は、治療に専念していました。甲斐あって、斉藤学医師から卒業のおすみつきをいただきました。(まれな例です)その後葉書は間遠になりましたが、ときどき届いていました。しかし治療卒業後の彼女の葉書の文体からは、かつての輝きは失せていました。
《平凡でよい》ある時、私は、返事を書きました。「トラウマがなくなったら、文章にかつての異様な迫力はなくなったね、」と。今度は電話がきました。「自分ではよくわからないけど、これでいいんだ」という返事でした。
丁度近頃この内容に見合った見解を自分のなかで見つけたところでした。といいますのは自分の好きな本、漫画、映画、音楽、芸術など自分の生活を取り巻く趣味嗜好のなかになにか共通する部分があると幼いころからおもっていたのですが、其れが何なのかはわかりませんでした。ですが、或る本の作者のなかに幼少期の経験の中に大きな傷をのこしていて、その後にも影響しているということを知りました。で、調べてみると私の好きなものの作者たちの殆どは過去(
特に幼少期)のトラウマを抱えて生きているということを知りました。強烈に、鮮烈に自分が好きなものがあり、どうしてここまで趣味嗜好への拘りは揺るがないのか不思議で仕方がありませんでしたが、そのことを知って腑に落ちました。私にも幼いころの傷のようなものが深くあり、そのことが生き方や考え方に影響を及ぼしていたからです。私自身はそれを特徴として特殊技能みたいなものと思って楽しんでいますが。心に闇のない人にはきっとわからないことでしょうが。