心理学ニュース

13、コントロールパワー

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「ありがとうございます」とお礼を言われるよりも、喜んでくれるということが、ばく大な力を発揮するのです。人は誉められたり、お礼を言われるのもうれしいけれど、「うれしい~っ」と手放しで喜ばれるとなんだかこちらもひどくうれしくなってしまい、ひとつ骨を折ってあげたいと感じるようになることがしばしばあります。彼らは喜んでみせるということが人を動かす力のあることをおそらく無意識なのでしょうが、よく知っているのです。

ここに人をコントロールする力が生まれます。彼らの中には巻き込む力のたいへん強い人がいます。基本の気質としてかなりパワーを持っています。カウンセラー仲間から聞いた話なのですが、外国でラテン系の境界性人格障害と思われる精神科医と知り合いだったそうですが、そら恐ろしいほどのパワーの持ち主だったと言います。

たいていの方は、出会いの初期はコントロールされていると感じませんから、とてもよい印象なのです。しかしながら彼らはいつまでたってもコントロールすることばかりに専念して一貫性がないので、やがて振り回し屋という印象を抱かせることがあります。

大変なパワーを発揮できるのですから、そのまま突っ走って何事か目的を達すればよいのにと思うのですが、胸に空虚感を住まわせ、他人を振り回すことで空虚感を埋めようとするので、通常は自己実現とはほど遠い生き方をしています。パフォーマンスばかりが目立ってしまい内容に乏しいことが多いものです。

このようなコントロール力に一般の方たちはほとんど気がつきません。大部分の人が気がつかない他人を動かす力をコントロール力などというのは、裏読みばかりしているカウンセラーの悪癖というおこごとを頂戴するかもしれません。

世間的にはこのコントロールする力を魅力といいます。そうなんです。境界性人格障害の方はたいへん魅力的な人物として登場してくることが多いものです。そのうえターゲットへの近づき方がこのうえなく巧みだったりもします。

ただし魅力的なのは始めだけです。そのうち振り回されきってへとへとになるのが関の山です。この振り回すという行為を、臨床家の用語でテストするといいます。つまり相手の方(かた)が自分をどれだけ受け入れているのか、試しているのです。振り回し放題に振り回したら満足して、振り回し癖がおさまるのかといえば、幼少期でないかぎりそのようなことはありません。とてもむなしかった過去を抱えている方たちなのでしょうね。ちなみに境界性人格障害の人の中には、手(て)錬(だれ)の密告魔あるいはたんなる無類の密告愛好者という方もいます。

筆者も境界性の方たちに振り回されほうだいに振り回された経験がたっぷりとあります。おかげさまで初対面のころからめちゃめちゃに喜ばれたりすると、赤信号が灯(とも)るくらいにはなりました。

初対面に近いころに、こちらが印象的に記憶しているほどやたらに喜んでくれた人がいたらその方は、たとえその方が無意識にせよあなたはコントロールの対象になっているのです。

DSMⅣ(7)の「慢性的な空虚感」は寂しさに置きかえてもよいのではと書きました。彼らは寂しさにはひどく弱いので、捨てられてしまうことに耐えられません。DSMのチェック項目(1)に「現実に,または想像の中で見捨てられることを避けようとするなりふりかまわない努力」とあるように見捨てられ不運がとても強いことが多いのです。捨てられることへの恐怖のあまり、捨てられないために前もって捨ててしまうというアクロバティックなことをする方もいます。

 

 

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