他者を変えたいと思う—ふしぎな話ですが、お願いするという形をとらないで他者を変化させようとするというか、動かしたいと思うのはじつは傷つき体験と関連している場合があるのです。このような方が、カウンセリングがすすむにつれて、怒りがなくなっていくと、それと平行して親しい他者をなんとかして動かそうとする強い思いが減ってくることがあります。
子供をこうしたいとか、夫のここをなんとか変えさせようとか、そういう思いです。あの強烈にわきあがってくる思いが、自然消滅して「そうなったらうれしいけど、私の力ではできない」「人を動かそうとしたってそれは無理」などとある種の達観が芽生えてくるといったらよいのでしょうか。どうでもよくなるとか、興味がなくなるようなのです。親しい他者を動かそうとする思いが消え去るわけではないけど、情熱は冷えていきます。
そしてカウンセラーの感想としては、そのころには声に怒りがこもらなくなってきているような感じがします。同時に根深いうらみの感情がかき消えていることが多いものです。
それと平行してもう少し遠い存在の人の動向も気にならなくなるようです。