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33、太宰治作「饗応夫人」はアダルトチャイルド?

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名品ぞろいの太宰治のひとつに「饗応夫人」という作品があります。戦後太宰が東京の三鷹にいたころを舞台にした創作ですが、お客を病的に、身を削ってでももてなさないと気のすまない未亡人をややコミカルに描いています。夫人の接待を受けるためにずうずうしくしばしば訪れる笹島という人物は、太宰自身がモデルになっているのかもしれません。

お手伝いさんが女主人について語っているという設定ではじまるのですが、玄関のベルが鳴り饗応するほどの縁もゆかりもないくだんの笹島の来訪を知ると夫人は「泣くような笑うような笛の音に似た不思議な声を挙げ」て接待に狂奔するしだいとなります。接待のせいで、財産をかなり減らしあまつさえ体まで悪くするという始末です。夫人が苦痛を感じつつも、もてなさずにはいられない脅迫的な心の一部は、もしかすると太宰自身にもある程度共通しているのかもしれません。

ところで「日曜美術館」というテレビ番組で、この夫人にモデルがいたことが指摘されていました。女性は画家でどうやら子供がいなかったらしいのですが、親類の女性はじっさいにとてもいい方だったという思い出を語っていました。

ここで「ノーがいえない」というアダルトチャイルドの典型的な習性が思い出されます。けっして心から歓迎したくなるような相手ではない、しかしノーという選択肢をこれまで一度も選んだことがなかったという心の習慣で説明できるのではないのかと思います。好きでいい人をやっているのじゃない、ただノーという言葉を学べなかっただけにすぎないのです。他人さまにはすこぶるよくって、親類にもまあ良いし、つれあいにもノーとはいえない(お腹のなかではけっこうたまっていても)。そして、わが子には結果的にそれほどよい養育者ではなかったというケースはあります。

ノーが言える人は、安心してノーといえる環境に育ったともいえます。「饗応夫人」の全部または一部が自分のなかに住んでいると思う人は、「ごめんなさいね~」ではじまる断り方を練習してみましょう。この言葉は、お断りしてすまないですね、という意味をこめたとても使い勝手のよい言葉です。

 

 

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